2021.02.01

社会医療法人 熊谷総合病院
副理事長 中村 信一

地域から信頼され続ける“新しい病院”へ

幅広い医療を提供する“熊谷市民病院”的な存在

熊谷総合病院は1945年に農業会病院として開設され、その3年後、埼玉県厚生連に移管されました。以来、半世紀以上にわたって、熊谷市で医療を提供し続けています。2016年5月、社会医療法人北斗(北海道帯広市)の支援を受けて再スタート。2020年10月から、CHCPグループの支援を受けることになりました。

当院は多くの診療科を有しており、地元の市民病院的な医療機関として多くの患者さんを受け入れています。現在、従来からの消化器内科、外科、整形外科を中心とした診療体制に加え、最先端医療機器を整備し、がんの早期発見・早期治療を実現した第2次予防医療(脳ドック、心臓ドック、がんドックのメニュー拡大)の強化、および脳神経外科や循環器内科(ハートセンター)、リハビリテーションなどの診療の充実に向けて努力しております。これらは全て国の地域医療構想に基づくものです。「地元で治療しながら働ける、もしくは早く通常の生活に戻り地域社会での役割を果たせる、標準的な医療を提供すると同時に“人に優しくがんに厳しい”先進医療の提供」を合言葉に、第2次予防医療(発症前対応)とがん治療の体制を整えています。人口20万人弱の地方都市で、予防医療から救急医療、そして回復期医療まで提供する、幅広い機能を持っているのが当院の特長であり強みです。

近隣のグループ病院と、強い連携関係の構築を

市民病院的な役割を担うという使命を踏まえ、永久的な安定運営に筋道をつけるため、CHCPグループの支援を受けることを決断しました。CHCPグループの支援を受けることになってから日が浅いのですが、早くも変化を感じています。職員の志気高揚のための新たな人事および組織制度の取り入れ、業務フローの検証による効率化と改善活動、債務圧縮などのプランを盛り込んだ支援スキームが提案されました。これらの取り組みが功を奏し、風通しがいっそう良くなり、意思決定が早くなりました。2020年11月、12月にはまず単月黒字を達成しました。また新型コロナウイルスの影響で、多くの医療機関が賞与の支給に苦労する中でも、当院は賞与を予定通りに満額出すことができました。これもCHCPグループのおかげだと感謝しています。

このように日々の運営管理から改善活動まで、一緒になって取り組めるようになりました。過去、支援母体が変わる際には、心配の声が上がったこともありましたが、CHCPの専門スタッフの皆さんからは事前に説明をいただき、十分な議論を重ねて信頼関係を深めることができました。古くからの仲間やパートナーのように関わり、多くの職員を安心させたと感じています。これまで長年に渡り、市民病院的な役割を果たしてきた病院です。病院名や診療体制を変えることなく、現状の強みをより伸ばしたい、そんな病院の方針と同じ考えを持ってCHCPグループから力強いサポートを得られたのはありがたいですね。

現在、CHCPグループが支援している3つの病院のうち、当院を含む2病院が埼玉県熊谷市にあります。もうひとつは熊外(くまげ)の愛称で長く地域医療を担っている熊谷外科病院です。当院と熊谷外科病院は、熊谷駅をはさんで車で10分程度、3㎞以内に位置しています。これまでも相互で救急医療を担い、地域医療に貢献してきた2病院ですが、地域で同じ診療科の症例を受け入れるなど、役割分担が不明確なところもありました。しかし、同じCHCPグループの支援を受ける事になったことから、現在は法人の枠を超え、患者の連携はもちろんのこと、共同交渉や共同購買、職員の交流が可能になりました。今後もより連携を図って、シームレスな医療提供体制が整えられるのではと期待しています。

地域完結型の医療・介護ネットワークを目指して

ご多聞に漏れず、当地でも少子高齢化が急速に進んでいます。県の推計では熊谷市など「県北医療圏」は、これから2025年にかけて、高度急性期や急性期機能の病床が過剰になる一方、回復期は大幅に不足することが示唆されています。当院は、少子高齢化の進む地域に“人に優しくがんに厳しい“高度先進医療を提供する目的で、2018年7月、放射線治療装置のトモセラピーとデジタルPET-CTを備えた総合検診棟を開設しました。ここにはMEG(脳磁図検査)や3テスラの高精度MRIも整備しており、脳神経系疾患や心血管系疾患にも十分対応できます。この設備を、ひとりでも多くの地域住民の方々にご利用いただき、健康増進や疾病予防に役立ててもらいたい。そのためには、周辺地域の医療機関、開業医の先生方にとどまらず、介護福祉事業所とも、さらなる強い連携が必要と考えます。地域完結型の医療・介護提供体制を構築し、これにより地域全体の医療水準を高く保ち、地元経済の活性化にも貢献できると考えます。

最後に、「熊谷の中心市街地で市民病院的な役割を担い、救急と専門医療を主軸とした急性期に特化する」が当院のコンセプトです。同じグループ病院と共に行う我々の取り組みは、地域における最適な医療資源の分配を行う際に、重要なモデルのひとつになると考えます。基幹産業が多くない埼玉県北部地域において、当院は600人以上の雇用を創出しています。CHCPグループの一員として、ともに経営基盤を整え病院運営における「無理、無駄、斑(むら)」を減らし、適切な人員配置を行うことで、これまで以上に高密な医療を地域に提供し続けたいですね。今後もCHCPグループと力を合わせて、地域医療に貢献していきます。

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